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ちょっとほろ苦い

DTMやったり酒飲んだり

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1.キャンパスにカゲロウ

1曲目のイメージテキストです。

京都だしやっぱ高層建築には規制がありそう。


大学は、広い。
いわゆる大学然としたキャンパスではないけれど、敷地が取れない分この建物は地下に伸びていったらしい。
昔の地下鉄とかよくわからない空間とか遺跡とか、よくも掻い潜ってこんなにも、と思ってしまうくらい複雑な構造をしている。
その分、地上に出ている分はこじんまりとしていて、のどかなものだ。
噴水のあるエントランス、桜の咲く中庭、おしゃれなカフェ。
 
桜も散りかけた春の最後、私は一人でベンチに座っていた。始まったばかりの学生生活、オリエンテーションも一通り終わってキャンパスは落ち着いたものだった。
剥がれかけたサークルの宣伝ビラが時折風に吹かれて動く。こんなにも清潔な世界で、それでもアナログな告知物は減る様子もない。
便利にはなったけどその便利さを誰もが享受できるわけではないことを、みんな知っている。手の届く場所にあるものは、意外と変わっていないのだろう。

掃除のおじいさんはそんなビラには目もくれず、箒をゆっくりと動かしている。剥がれかけとはいっても、勝手に剥がしては怒られるのかもしれない。
 
私は時計を見た。
確か、午前11時を少し回ったところだったと思う。水曜日は9時から始まる講義を終えてしまうと昼休み明けの3限まで時間が空く。
いつもなら図書館で過ごす時間だけど、何故か噴水横のベンチで読書を選んだのは天気のせいばかりではなかった気がする。
5月にしては少し肌寒さを感じる一方で、時折覗く陽の光がとても心地良かった。

「こんにちは」
声は小さかった。最初は自分に向けられたものだと気づかないほど。でも、本に向けた視界の隅に人の影の動くのが見えた。
ふと、私は顔を上げた。
ふわりとした服を着て、少し恥ずかしそうに笑う女性の姿。碧い目に薄茶色の髪の毛。脱いた色には見えなかった。
日本人ではないと思ったけど、年齢もよく分からない。とても幼いようで、とても落ち着いた表情にも見える。

「……こんにちは?」
たぶんちょっと疑問系になった。見た目で誤解されるけど、愛想はいい方だと思う。
途端に女性が安心したように息を吐く。緊張しているんだろう。

「何かご用でしょうか?」
先に私から訊いた。この時期に学内で声をかけてくるなんて、サークル勧誘くらいなものだろう。
お友達募集はクラスでたけなわだ。まぁ、私みたいに何となく輪の外に居ちゃうのもいるけど。
サークルに興味がないわけではないけど、幾つか覗いたところはどこも雰囲気に馴染めなかった。
サークルはそれこそ星の数ほどあるのだろうけど、その違いは話題や嗜好がある程度近しい人を寄せ集め、そうでない人間を弾くためだけのものにしか見えなかった。
結局どこもお酒と異性交遊。うーん、学生っぽいなぁ。
ずいぶん擦れた物の見方だと自分でも思うけど、4月のひと月でこうもなってしまう大学というのは恐ろしい。
楽しくやりたいのはもちろんだけど、それだけに溺れるのはちょっと腰がひけてしまう。
 
女性がおずおずと口を開く。
「サークルに興味ありませんか?」
ほら来た。
「あー……すみません」
「あんまり興味ないです」
一瞬目が逸れた。何となくバツが悪い。どこからか響く僅かなモーターの音。噴水の水音。

「ですよね」
声のトーンは変わらなかった。少なからず落胆させただろうと予測していただけに(そして自分も気まずさを覚えていただけに)意外だった。
そのあとに続いた言葉。

「私もなんです」
思わず見上げてしまった。長いまつげ、その奥にある透き通った瞳が子供っぽく笑う。
胸がきゅっとなった。
私はそれを悟られないようにと、ゆっくりと本に栞を挟む。深呼吸したかった。

「よかったら」

「お茶でもしませんか?」
私の返答も聞かないうちに彼女は構内のカフェの検索を始めている。
「いや、あの」
彼女の視線は端末に見入ったままだ。桜の花びらが目の前を過ぎてゆく。
周りの音が少し遠のく感覚。思わず腕の時計に目をやった。

「あ、ここ、新作のケーキがあるみたいですよ」
ケーキ。
あれ、あそこ新作なんて出すんだ。
「コーヒーならこっちだと思うけど……」
少女はひとり楽しそうにしている。思わずつられてしまうような笑顔で。

完全に彼女の思うがままなんだろうけど、私は確実に目の前の、この少女に惹かれていた。
端末をいじりながら、先ほどとは打って変わった表情に仕草。
「断られるはずがない」という確信をもたれてしまったか。まぁ、もうそんな気もないんだけど。
ようやく一息ついた途端。

「そういう顔で笑うのね」
 
そういうのは、ズルイと思った。

テーマ:東方プロジェクト - ジャンル:ゲーム

  1. 2010/11/25(木) 23:12:12|
  2. サークル
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