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4.月明かりの先に/5.二人のすきま


4曲目と5曲目のイメージテキストです。

この2曲と「雨降り午後」は半年くらい前に作った曲を作り直したものになります。
前のバージョンはHPに未だに上がったままだったりしています。
自分的にはかなりお気に入りのアレンジです。

でも、その分つくり直すのには苦労しました。
少しは成長できたんじゃないかと思います。


薄明かり。まだ青さの残る芒がささやかに揺れている。朽ちかけた板に残る「デンデラ野」の文字。
清々しく、少し痛みを感じる空気。何もないように見える、変哲のない原っぱで二人。
かつては「向こう側」への入り口として特別な存在だった開けた場所は、そのままに高い木もなく荒涼としていた。
 
「もう少しで日が暮れるよー」

蓮子が空を見上げて言う。夕焼けも帳に包まれそうな頃合い。既に月は夕闇を押しのけて輝いている。
メリーは何かを待つように、ただ動かない。
蓮子はなんの反応も示さないメリーを見ながら、体が刻む時刻のリズムを心地よく感じていた。
空さえ見上げれば正確な場所と時間が分かるというのが彼女の不思議な能力だけれども、メリーは気持ち悪いだの何だの。
それは冗談であるとしても、分かっちゃうのだからしょうがないよなぁと思う。
 
蓮子の腕には時計がある。
洒落っ気のない彼女が実用的でないものを身に着けるのは何かある証拠と、メリーは事あるごとに蓮子をからかった。
蓮子は適当にあしらって相手にしなかったけど、本当のところは見透かされている気がする。
そして、その本当のところというのは少なからずメリーも共有できる類の、恐れというかなんというか。
だからメリーだって深くつっこんでこないし、ハッキリさせたがらないんだと勝手に思い込む。


思い込んで、期待を背負わせて、信じて。ほんとに。
成り立ってるのか不安になるくらい儚い関係性で私は周りとつながって、そして幸せだとか悲しみだとか、いろんな感情を全部そこにゆだねている。
ゆるぎない時間の流れとか、今いる自分の座標とか、それは大層に聞こえたとしても、私一人を確かにするにも覚束ないくらい頼りない。
今は私の時間とあなたの時間が、かりそめでも、重なることが嬉しい。それだけでいいんだけど。

遠くで烏の鳴く声がする。
通り過ぎる風に、首をすくめた。息が白くなっても不思議じゃないくらい。
結界を見つけるのはメリーの役割なのだから、私に出来ることは今のところなにもない。
メリーは別に寒がるふうでもなく、まだ立ち尽くす。
 

自分は今何を考えているのだろう。メリーはぼんやりと思う。視界の隅々まで透き通った感覚。
何を見ているわけでもなく、何も見ていないわけでもない。
「境界」と人が呼ぶものは、探すまでもなくそこかしこにある。

でもそのほとんどは向こう側が見えない。
行ったきり、戻ってこれないところ。
何かの拍子で切れたり裂けたりした世界の隙間がつながる先に、自分たちにとって「意味のあるもの」がある可能性なんてもしかしたら、
ここに私たちがいるくらいの確率なのかもしれない。

かつて見た桜。迷い込んだ竹林。お茶をご馳走になったあの館。大きな傘を持った女の子。

夢にしては出来過ぎだけど、その境目を越える感覚が目を覚ました時のそれに似すぎていて。
ってこれは蓮子が言ってたんだっけか。

いつもなら、寝て起きて。でも、起きて、起きて、覚めて、起きる。そんな感覚だから。

「私だけだったら間違いなく迷子かな」
 
メリーはそっとつぶやいた。もうほとんど夜空と言っていいくらいの暗がりに、月が見える。そして、星。
昔に比べればずいぶんきれいなはずの京都の空でも、やはり視えない景色。

ざっと芒がなびく。

西の山並みに残るあの残照が去れば、もうはっきり視えるだろう。
月明かりの先に。

テーマ:東方プロジェクト - ジャンル:ゲーム

  1. 2010/11/25(木) 23:12:48|
  2. サークル
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